こんにちは。
元歯科医師の田島美和です。
「インプラントにしたいけれど、費用が高くて…」
「子どもの歯並びは気になるけど、矯正はすぐには無理かしら」
私が院長としてクリニックに立っていた頃、こうした治療費に関するお悩みを本当にたくさん伺ってきました。
歯の健康が、お食事の楽しみや日々の笑顔にとっていかに大切か。
それは、誰よりも分かっているはずなのに、費用の壁を前に一歩踏み出せない。
そんな患者さんのもどかしいお気持ちに、何度も触れてきました。
もしあなたが今、同じようなお悩みを抱えているのなら、ぜひ知っていただきたい選択肢があります。
それが「歯科ローン(デンタルローン)」です。
歯科ローンは、高額になりがちな自費診療の費用を分割で支払うための、いわば「未来の健康への投資」を後押ししてくれる仕組みです。
この記事では、20年以上患者さんと向き合ってきた私の経験をもとに、歯科ローンの仕組みから、後悔しないための賢い選び方、そして意外と知られていない注意点まで、専門用語をなるべく使わずに、やさしく丁寧にお話ししていきますね。
この記事を読み終える頃には、あなたに合った資金計画のヒントが見つかり、安心して治療への一歩を踏み出せるはずです。
一緒に見ていきましょう。
目次
そもそも「歯科ローン」とは?仕組みと種類をやさしく解説
まずは「歯科ローンって、一体どういうものなの?」という基本からお話ししますね。
難しく考える必要はありません。
簡単に言うと、インプラントや矯正治療といった、保険がきかない高額な歯科治療の費用を、信販会社や銀行があなたに代わって歯科医院に一括で支払い、あなたはその後、分割で返済していくというサービスです。
まとまったお金が手元になくても、すぐに質の高い治療を始められるのが一番のメリットと言えるでしょう。
どんな治療に使えるの?インプラントや矯正も対象に
歯科ローンが主に利用されるのは、健康保険が適用されない「自費診療(自由診療)」です。
具体的には、以下のような治療が挙げられます。
- インプラント治療:失った歯を補うための治療法です。
- 歯列矯正:歯並びを整える治療で、お子さんだけでなく大人の方も増えています。
- 審美歯科治療:セラミックの被せ物や詰め物、ホワイトニングなど、見た目を美しくするための治療です。
- 精密な入れ歯:より快適でよく噛める、オーダーメイドの入れ歯などです。
これらの治療は、数百万円単位になることも珍しくありません。
そんな時、歯科ローンは心強い味方になってくれるのです。
カードローンとの違いは「目的」と「金利」
「カードローンでお金を借りるのと何が違うの?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんね。
一番大きな違いは、お金の使い道が「歯科治療」に限定されていること、そして、それに伴って金利が低めに設定されていることです。
カードローンは使い道が自由な分、金利が高くなる傾向にあります。
一方、歯科ローンは目的がはっきりしているため、比較的低い金利で利用できるのが特徴です。
治療費のように大きな金額を借りる場合は、この金利の差が、最終的な総支払額に大きく影響してくるんですよ。
主な3つの種類と特徴を知りましょう
歯科ローンには、大きく分けて3つの種類があります。
それぞれの特徴を、簡単な表にまとめてみました。
どこで申し込むかによって、金利や手続きの手間が変わってきますので、ご自身の状況に合わせて比較検討してみてくださいね。
種類 | 申込窓口 | 金利の傾向 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|
銀行系ローン | 銀行の窓口やWebサイト | 低い | 金利が比較的低く、総支払額を抑えやすい | 審査が厳しい傾向にある |
信販会社系ローン | 信販会社のWebサイトなど | やや高め | 銀行系より審査のハードルが低い場合がある | 銀行系より金利が高くなることがある |
クリニック提携ローン | 歯科医院の窓口 | 信販会社系と同等 | 手続きがスムーズで、手間が少ない | 提携先が限られ、比較検討しにくい |
後悔しないための歯科ローン選び5つのステップ
さて、歯科ローンの基本が分かったところで、ここからは「じゃあ、どうやって選べばいいの?」という具体的なお話をしていきます。
私が患者さんにご説明する際に、いつもお伝えしている5つのステップです。
この順番で進めていけば、きっとあなたに合ったローンが見つかりますよ。
ステップ1:まずは治療計画と総額を正確に把握する
何よりも先にやるべきことは、かかりつけの歯科医師としっかり話し合い、治療の全体像と必要な費用の総額を明確にすることです。
「だいたいこれくらい」ではなく、検査費用や追加でかかる可能性のある費用も含めて、正確な見積書を出してもらいましょう。
この金額が、ローンを組む上でのすべての土台になります。
ここが曖昧なままでは、正しい計画は立てられませんからね。
ステップ2:複数のローンを比較する(金利・手数料・返済期間)
治療費の総額が分かったら、次に複数のローン商品を比較検討します。
見るべきポイントは主に3つです。
- 金利:最も重要なポイントです。金利が1%違うだけで、総支払額は数万円単位で変わってきます。
- 手数料:保証料や事務手数料など、金利以外にかかる費用がないかもしっかり確認しましょう。
- 返済期間:最長で何年まで組めるのかを確認します。期間が長ければ月々の負担は減りますが、その分、利息の総額は増えるので注意が必要です。
歯科医院で提携ローンを勧められることも多いですが、それだけを鵜呑みにせず、ご自身でも銀行のローンなどを調べて比較することが、賢いローン選びの秘訣ですよ。
ステップ3:無理のない「返済シミュレーション」を立てる
気になるローンが見つかったら、必ず「返済シミュレーション」を行いましょう。
多くの銀行や信販会社のウェブサイトには、借入希望額や返済期間を入力するだけで、月々の返済額や総支払額を計算してくれるツールが用意されています。
大切なのは、少し背伸びした金額ではなく、毎月の家計から無理なく支払い続けられる金額を設定すること。
治療が終わった後も、返済は続いていくということを忘れないでくださいね。
ステップ4:審査に必要なものを早めに準備しておく
ローンを申し込む際には、必ず審査があります。
一般的に、以下のような書類が必要になることが多いので、早めに準備しておくと手続きがスムーズに進みます。
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 収入証明書類(源泉徴収票、確定申告書など)
- 治療の見積書
- 健康保険証
何が必要になるかは金融機関によって異なりますので、事前に確認しておきましょう。
ステップ5:契約内容は隅々まで確認を
無事に審査が通ったら、いよいよ契約です。
契約書には難しい言葉がたくさん並んでいますが、ここは面倒くさがらずに、隅々まで目を通してください。
特に、金利の種類(固定か変動か)、繰り上げ返済の条件や手数料の有無などは、後々の返済計画に関わる重要な項目です。
もし分からないことがあれば、遠慮せずに担当者に質問しましょう。
すべてに納得した上で、サインをすることが大切です。
【元院長がこっそり教える】歯科ローン審査のポイントと注意点
私が院長だった頃、患者さんから「ローンの審査って、厳しいんでしょうか?」と、こっそり相談されることがよくありました。
ここでは、審査で見られるポイントや、意外と見落としがちな注意点についてお話ししますね。
審査で見られる「3つの信用」とは?
金融機関が審査で何を見ているかというと、突き詰めれば「この人は、きちんと最後まで返済してくれるだろうか?」という信用力です。
具体的には、以下の3つの点が重視されると言われています。
- 個人の属性:年齢、職業、勤務先、勤続年数などです。安定した職業で、長く勤めているほど信用は高くなります。
- 収入状況:年収に対して、借入希望額が多すぎないか、というバランスが見られます。
- 過去の信用情報:これまでにクレジットカードや他のローンの支払いを延滞したことがないか、といった履歴です。
もし過去に支払いの遅れなどがある場合は、審査に影響する可能性も正直に考えておく必要があります。
意外と見落としがち?繰り上げ返済と保証人のこと
契約の際に見落としがちなのが「繰り上げ返済」の条件です。
ボーナスなどで家計に余裕ができた時に、予定より早く返済を進めることを繰り上げ返済と言います。
これをすると、将来支払うはずだった利息を減らすことができるので、総支払額を抑える上で非常に有効です。
ただし、ローン商品によっては手数料がかかったり、そもそもできなかったりする場合もあるので、契約前に必ず確認しておきましょう。
また、保証人が必要かどうかも大切なポイントです。
最近は保証人不要のローンも多いですが、もし必要になった場合は、お願いする方に迷惑をかけないよう、治療内容や返済計画を誠実に説明することが大切ですね。
クリニックの窓口で相談するときのコツ
もし、かかりつけの歯科医院でローンについて相談する場合は、「一番金利の低いローンはどれですか?」とストレートに聞いてみるのも一つの手です。
クリニックによっては複数の信販会社と提携していることもありますからね。
また、歯科医院が独自に行っている「院内分割」という制度がないかも確認してみましょう。
これは金利がかからないことも多く、もし利用できれば患者さんにとっては一番負担の少ない方法と言えます。
賢く活用したい「医療費控除」との関係
最後に、ぜひ知っておいていただきたい大切な制度についてお話しします。
それは「医療費控除」です。
歯科ローンを利用した場合でも、この制度を活用することで、支払った税金の一部が戻ってくる可能性があるんですよ。
ローンで支払った治療費も控除の対象になります
医療費控除とは、1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費が一定額を超えた場合に、所得税や住民税が軽減される制度です。
そして大切なのは、歯科ローンで支払った治療費も、この医療費控除の対象になるということです。
ただし、インプラントや矯正治療が「美容目的」ではなく、「噛み合わせの改善など、機能回復が目的」であると認められる必要があります。
このあたりは、担当の先生に確認してみてくださいね。
いつ、どうやって申請するの?確定申告の基本
医療費控除を受けるためには、ご自身で確定申告をする必要があります。
申告するタイミングは、ローンを組んだ年、つまり信販会社が歯科医院に治療費を支払った年です。
その年に、治療費の総額をまとめて申告することができます。
分割で返済している途中でも、全額をその年の医療費として計上できる、と覚えておいてください。
注意!金利や手数料は対象外です
一つだけ注意点があります。
医療費控除の対象となるのは、あくまで「治療にかかった費用そのもの」です。
ローン会社に支払う金利や手数料の部分は、残念ながら対象外となりますので、申告の際には間違えないようにしましょう。
まとめ:あなたに合った選択で、健やかな口元と未来を手に入れましょう
今回は、歯科ローンの賢い選び方について、詳しくお話ししてきました。
最後に、大切なポイントをもう一度おさらいしておきましょう。
- 歯科ローンは、高額な自費診療を受けるための心強い選択肢です。
- 選ぶ際は、金利だけでなく手数料や返済期間も含めて複数の商品を比較しましょう。
- 必ず無理のない返済シミュレーションを行い、家計への負担を確認することが大切です。
- ローンで支払った治療費も、医療費控除の対象になることを覚えておきましょう。
歯科ローンは、あなたの「健康になりたい」という前向きな気持ちを支えてくれる、とても便利な仕組みです。
しかし、あくまで借金であることには変わりありません。
そのことを忘れずに、ご自身のライフプランと照らし合わせながら、慎重に検討してくださいね。
そして何より、一番大切なのは、あなたが信頼できるかかりつけの先生とよく相談することです。
費用面のことも含めて、親身になってくれる先生がきっといるはずです。
この記事が、あなたが諦めかけていた治療への扉を開き、健やかな口元と輝く未来を手に入れるための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。