「歯医者さん」と聞くと、胸がドキドキしたり、昔の治療を思い出して、つい足が遠のいてしまったり…。
そのお気持ち、歯科医師として20年以上患者さんと向き合ってきた私には、痛いほどよく分かります。

でも、もし「ここなら安心して通える」と思える歯医者さんが見つかったら、あなたのお口の健康、そして人生はもっと豊かになるはずです。

こんにちは。
元歯科院長の田島美和です。
かつては都内で予防歯科を中心としたクリニックを営み、たくさんの患者さんのお口の健康を守るお手伝いをしてきました。

この記事では、私が院長時代に「患者さんの痛みを和らげるために、これだけは譲れない」とこだわり続けてきた5つのポイントを、包み隠さずお話しします。

この記事を読み終える頃には、あなたにピッタリの「痛くない、優しい歯医者さん」を見つけるための、確かなコンパスを手にしているはずですよ。

そもそも、なぜ「痛い歯医者さん」と「そうでない歯医者さん」がいるのでしょうか?

「歯の治療が痛い」と感じる原因は、実は一つではありません。
一つは、麻酔の注射や歯を削る時などの「身体的な痛み」。
そしてもう一つが、不安や恐怖からくる「精神的な痛み」です。

この二つの痛みに、どれだけ深く寄り添えるか。
それが、「痛くない歯医者さん」と「そうでない歯医者さん」の大きな違いだと、私は考えています。

例えば、最新の設備を整えて身体的な痛みを減らす努力はもちろん大切です。
でもそれと同じくらい、患者さんが「何を不安に思っているのか」「どんな治療が怖いのか」をじっくりお聞きし、心の緊張を解きほぐしてあげることも、痛みを和らげる「最高の麻酔」になるのです。

技術と心の両面から、痛みに配慮してくれる歯医者さん。
そんな温かい場所を、一緒に見つけていきましょうね。

元院長が教える!痛くない歯医者さんを見つける5つのチェックポイント

ここからは、私が特にこだわってきた具体的なポイントを5つご紹介します。
歯医者さんのホームページなどを見ながら、ぜひチェックしてみてください。

ポイント1:あなたの話を「聞く時間」を大切にしているか

治療を始める前に、あなたの不安や悩み、希望をじっくり聞いてくれるかどうか。
これは、痛くない治療への第一歩であり、最も大切なポイントです。

専門用語で一方的に説明するのではなく、「何か分からないことはありませんか?」「痛いのが苦手なんですよね、大丈夫ですよ」と、あなたの目を見て、優しく語りかけてくれる。
そんな先生やスタッフがいる歯医者さんを選んでください。

私のクリニックでも、初診の患者さんには必ず30分以上のカウンセリング時間を設けていました。
治療の話だけでなく、時には世間話を交えながら、まずは患者さんの心に寄り添うことを何よりも大切にしていたんです。

ホームページの「院長の挨拶」や「治療方針」のページに、「カウンセリング重視」「対話を大切に」といった言葉が書かれているか、ぜひ確認してみてくださいね。

ポイント2:麻酔の「ひと手間」を惜しまないか

麻酔の注射そのものが「痛い」と感じる方は多いですよね。
でも、この麻酔の痛みは、いくつかの工夫で大きく和らげることができるんです。

  • 表面麻酔:注射の前に、歯ぐきに塗るゼリー状の麻酔です。針を刺す「チクッ」とした痛みをほとんど感じなくさせます。
  • 極細の注射針:注射針が細ければ細いほど、痛みは少なくなります。
  • 麻酔液を温める:麻酔液が冷たいと、体に入った時に刺激や痛みを感じやすいです。体温と同じくらいに温めてから使う配慮は、痛みを和らげる優しい工夫です。
  • 電動麻酔器:コンピューター制御で、ゆっくりと一定の圧力で麻酔液を注入できる機械です。手動で注入する際の圧ムラによる痛みをなくします。

これらの工夫は、いわば「ひと手間」。
このひと手間を惜しまず、「当院では痛みを減らすためにこんな工夫をしていますよ」とホームページなどで丁寧に説明している歯医者さんは、患者さんの痛みに真摯に向き合っている証拠だと言えるでしょう。

ポイント3:新しい技術や設備について、分かりやすく説明しているか

最近では、治療中の痛みを減らすための様々な設備が登場しています。
例えば、以下のようなものです。

  • レーザー治療器:「キーン」という不快な音が少なく、痛みを抑えながら虫歯だけを安全に取り除けることがあります。
  • 拡大鏡(マイクロスコープ、ルーペ):歯を何倍にも拡大して見ることで、虫歯の部分だけを精密に削ることができます。健康な部分を傷つけないので、治療後の痛みを最小限に抑えられます。

大切なのは、ただ「最新設備があります」とアピールしているだけでなく、「この設備を使うと、なぜ痛みが少なくなるのか」を、私たち患者にも分かるように説明してくれているか、という点です。

難しい言葉を並べるのではなく、「この機械を使うと、嫌な音がしないんですよ」「歯を削る量を最小限にできるので、体に優しいんです」と、その先にある「患者さんのメリット」を伝えてくれる歯医者さんを選びましょう。

ポイント4:院長やスタッフの「人柄」が伝わってくるか

結局のところ、安心して治療を受けるために一番大切なのは、「人」ではないでしょうか。
ホームページの院長紹介やスタッフブログなどから、院内の「温かい雰囲気」や「人柄」が伝わってくるかを、ぜひ感じ取ってみてください。

院長先生の趣味や、スタッフさんたちの和気あいあいとした写真。
クリニックからのお知らせや、歯に関する豆知識を発信するブログ。

そういったものから、「この人たちなら、私の不安な気持ちを分かってくれそうだな」と感じられるかどうかが、あなたにとっての「良い歯医者さん」を見つけるための、大切なヒントになります。
特に女性やシニアの方にとっては、院長やスタッフに女性がいると、悩みを相談しやすくて安心、という方も多いかもしれませんね。

ポイント5:口コミの「言葉の選び方」に注目する

歯医者さん探しで、口コミサイトを参考にする方も多いと思います。
その時に、ぜひ注目してほしいのが、「どんな言葉で評価されているか」です。

「痛くなかった」「早かった」という結果だけの口コミも参考になりますが、それ以上に「治療のプロセス(過程)」について書かれた口コミを探してみてください。

「治療の前に、これから何をするのか丁寧に説明してくれたので安心できました」
「痛かったらすぐに手を上げてくださいね、と何度も優しく声をかけてくれました」
「先生も衛生士さんも、皆さん笑顔で迎えてくれてホッとします」

このような口コミは、その歯医者さんがいかに患者さんの気持ちに寄り添っているかを示す、何よりの証拠です。
あなたと同じように、痛みが苦手な人が安心して通えている。
その事実は、きっとあなたの背中を優しく押してくれるはずです。

勇気を出して一歩前へ。予約の時と治療の時にできること

あなたに合う歯医者さんが見つかったら、あともう一歩だけ、勇気を出してみませんか?
それは、「痛みが苦手だ」ということを、正直に伝えることです。

予約の電話の時に、「すごく痛がりで、歯医者さんが怖いんです」と一言添えるだけで、歯医者さん側も心の準備ができます。
「この患者さんには、特に優しく、こまめに声をかけながら治療を進めよう」と思ってくれるはずです。

そして治療中、もし少しでも痛みや違和感があったら、我慢せずに手を挙げて合図をしてください。
それは、わがままではありません。
安全で快適な治療を進めるための、大切な「患者さんからのサイン」なのです。

まとめ

あなたに合う、優しい歯医者さんを見つけるための5つのポイントを振り返ってみましょう。

  1. あなたの話を「聞く時間」を大切にしているか
  2. 麻酔の「ひと手間」を惜しまないか
  3. 新しい技術や設備について、分かりやすく説明しているか
  4. 院長やスタッフの「人柄」が伝わってくるか
  5. 口コミの「言葉の選び方」に注目する

歯の健康は、美味しいものを美味しく食べ、大切な人とおしゃべりを楽しむ、豊かな人生の土台です。
そして、良い歯医者さんは、その大切な土台を一生涯にわたって一緒に守ってくれる、人生のパートナーのような存在です。

どうか、「痛いのが怖いから」という理由だけで、歯医者さんから遠ざかってしまわないでくださいね。
あなたのお気持ちに優しく寄り添ってくれる歯医者さんは、必ず見つかります。

この記事が、あなたのその一歩を、そっと後押しできたなら、これほど嬉しいことはありません。