「銀歯がキラッと見えるのが気になって、思い切り笑えない」「白い歯にしたいけど、セラミックは高額すぎて手が出ない」——そんなお悩みをお持ちではありませんか?

はじめまして。元歯科医師で、現在は歯の健康に関する情報を発信しているライターの田島美和と申します。名古屋市出身、東京都世田谷区在住の52歳です。約20年間、都内で予防歯科を専門とした歯科医院を営んできました。

臨床の現場で数え切れないほどの患者さんと向き合う中で、「保険で白い歯が入れられたらいいのに」というお声をたくさんいただいてきました。そんな願いを叶えてくれるのが、今回ご紹介する「CAD/CAM冠(キャドキャム冠)」です。

ただし、CAD/CAM冠は決して万能ではありません。メリットもあればデメリットもあります。この記事では、元歯科医師として「本当のところ」を正直にお伝えいたします。治療を検討されている方が、納得のいく選択ができるよう、できるだけ分かりやすくご説明していきますね。

CAD/CAM冠とは?保険で白い歯ができる仕組み

そもそもCAD/CAM冠ってどんなもの?

CAD/CAM冠とは、コンピューターの技術を使って設計・製作される白い被せ物のことです。「CAD」は「コンピューター支援設計」、「CAM」は「コンピューター支援製造」の略称で、歯科技工士さんが手作業で作っていた従来の被せ物とは製作方法が大きく異なります。

素材には「ハイブリッドレジン」という材料が使われています。これは、プラスチック(レジン)とセラミックの粉末を混ぜ合わせたものです。純粋なセラミックほどではありませんが、銀歯と比べるとずっと自然な白い色味を再現できます。

製作の流れを簡単にご説明すると、歯の型を取った後、そのデータをコンピューターに読み込み、専用の機械がハイブリッドレジンのブロックを歯の形に削り出して完成させます。職人さんの技術に頼らずに、安定した品質の被せ物を作れるのが特徴です。

2014年から始まった保険適用の歴史

CAD/CAM冠が保険適用になったのは2014年のこと。当初は小臼歯(前から4〜5番目の歯)だけが対象でしたが、その後段階的に適用範囲が広がってきました。

公益社団法人日本補綴歯科学会の「保険診療におけるCAD/CAM冠の診療指針2024」によると、現在(2024年6月改定以降)の適用範囲は以下のとおりです。

  • 前歯・小臼歯(1〜5番目の歯):条件なしで適用可能
  • 第一大臼歯(6番目の歯):条件付きで適用可能
  • 第二・第三大臼歯(7〜8番目の歯):条件付きで適用可能
  • 金属アレルギーの方:医師の診断書があれば全ての歯に適用可能

さらに、2023年12月からは「PEEK冠(ピーク冠)」という新しい素材も保険適用になりました。これは高強度プラスチックで作られた被せ物で、大臼歯であれば条件なしで使用できます。選択肢が増えたのは、患者さんにとって嬉しいことですね。

CAD/CAM冠の5つのメリット

1. 保険適用でリーズナブルに白い歯が手に入る

CAD/CAM冠の最大のメリットは、保険適用で白い被せ物が手に入ることです。費用の目安は、3割負担の方で1本あたり約3,000〜6,000円程度。銀歯の場合は約3,500円程度ですので、その差はわずか数千円です。

一方、自費診療のセラミック冠は1本あたり80,000〜150,000円ほどかかることも珍しくありません。この差を考えると、CAD/CAM冠がいかにお財布に優しい選択肢であるかがお分かりいただけると思います。

2. 金属アレルギーの心配がない

CAD/CAM冠はメタルフリー(金属を使わない)の素材です。そのため、金属アレルギーをお持ちの方でも安心して治療を受けられます。

銀歯に使われている金属は、長い年月をかけて少しずつ体内に溶け出すことがあります。それが原因で、手のひらや足の裏に湿疹ができる「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」などのアレルギー症状を引き起こすケースも報告されています。また、金属イオンが歯茎に沈着して黒ずんでしまう「メタルタトゥー」を防げるのも、メタルフリー素材の嬉しいポイントです。

3. 見た目が自然で目立ちにくい

CAD/CAM冠は白い素材ですので、銀歯のように口を開けたときにキラリと光ることがありません。天然の歯に近い色味を再現できるため、笑ったときや話しているときに目立ちにくいのが特徴です。

特に、小臼歯(4〜5番目の歯)は笑ったときに見えやすい位置にありますよね。この部分を白い歯で治療できるのは、審美面で大きなメリットといえます。

4. 適用範囲が広がり、多くの歯に対応

2024年6月の診療報酬改定で、CAD/CAM冠の適用範囲がさらに広がりました。条件付きではありますが、第二大臼歯(7番目の歯)や第三大臼歯(親知らず)にも使えるようになったのです。

また、先ほどご紹介したPEEK冠の登場により、大臼歯への選択肢も増えました。「奥歯も白くしたい」という方にとって、選べる治療法が増えたのは喜ばしいことですね。

5. 治療期間が比較的短い

CAD/CAM冠は、コンピューター技術を使って製作するため、従来の手作業による被せ物よりも製作時間を短縮できる場合があります。歯科医院によっては、型取りから装着まで数日〜1週間程度で完了することも。忙しい方にとって、通院回数が少なく済むのは助かりますよね。

知っておきたいCAD/CAM冠の6つのデメリット

メリットをお伝えしましたが、ここからは「正直に」デメリットもお話しします。治療を受けた後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためにも、しっかり把握しておきましょう。

1. 強度・耐久性はセラミックや金属に劣る

CAD/CAM冠に使われているハイブリッドレジンは、セラミックや金属と比べると強度が低い素材です。そのため、強い力が加わると割れたり欠けたりするリスクがあります。

特に注意が必要なのは、歯ぎしりや食いしばりの癖がある方。無意識のうちに強い力がかかり続けると、被せ物にダメージが蓄積されやすくなります。就寝中のマウスピース(ナイトガード)の使用を検討されることをお勧めします。

2. 経年変色・着色が起きやすい

ハイブリッドレジンはプラスチックが含まれているため、時間の経過とともに変色や着色が起こりやすい傾向があります。変色は約2〜5年で生じる可能性があるといわれています。

特に、コーヒー、紅茶、赤ワイン、カレーなど色の濃い飲食物を好まれる方は要注意。表面についた色素汚れは歯科医院でクリーニングすれば落とせますが、素材の内部まで変色してしまった場合は作り替えが必要になることもあります。

3. 外れやすい傾向がある

CAD/CAM冠は、銀歯やセラミックに比べると外れやすいという報告があります。統計によると、約5%の症例で脱離(外れること)が認められており、装着後半年以内に外れることが多い傾向にあるとされています。

ただし、外れたからといって作り直しになるとは限りません。被せ物を持参すれば、きれいにしてそのまま再装着できることも多いです。万が一外れてしまったら、被せ物を飲み込んだり捨てたりせず、歯科医院に持っていきましょう。

4. 歯を削る量が多くなる

CAD/CAM冠は強度を確保するために、ある程度の厚みが必要です。そのため、銀歯やセラミックに比べて歯を削る量が多くなることがあります。

神経が残っている歯の場合、削りすぎると痛みが出る可能性があります。特に、もともと歯の高さが低い場合は、CAD/CAM冠以外の選択肢を提案されることもあるかもしれません。

5. ブリッジや連結冠には使えない

現在のところ、CAD/CAM冠は単冠(1本の被せ物)にしか使えません。歯を抜いた部分を補うブリッジや、2本以上の歯をつなげる連結冠には対応していないのです(2025年度現在)。

歯を失った部分がある場合は、保険適用の銀歯のブリッジや、自費診療のセラミックブリッジ、あるいはインプラントなど、別の治療法を検討する必要があります。

6. すべての歯科医院で受けられるわけではない

CAD/CAM冠の治療を行うには、歯科医院が厚生労働省に施設基準の届出を行っている必要があります。「CAD/CAM冠を扱っていない」という歯科医院もありますので、治療を希望される場合は事前に確認しておくと安心です。

受診前に電話やホームページで「CAD/CAM冠の治療は可能ですか?」と確認してみてください。

銀歯・セラミックとの違いを比較

CAD/CAM冠、銀歯、セラミックの違いを表にまとめました。それぞれの特徴を比較して、ご自身に合った選択肢を見つける参考にしてください。

項目CAD/CAM冠銀歯セラミック(自費)
費用(3割負担/1本)約3,000〜6,000円約3,500円約80,000〜150,000円
見た目白色(やや人工的)銀色白色(自然で美しい)
耐久年数の目安約5〜7年約7〜10年約10〜15年
強度やや弱い強い強い
金属アレルギー心配なしリスクあり心配なし
変色のしやすさしやすいしないしにくい
ブリッジ対応不可可能可能

このように、それぞれに長所と短所があります。「費用を抑えたいけど銀歯は避けたい」という方にはCAD/CAM冠が向いていますし、「長く使えて見た目も美しいものを」という方にはセラミックがお勧めです。

CAD/CAM冠が向いている人・向いていない人

こんな方にはCAD/CAM冠がおすすめ

CAD/CAM冠は、以下のような方に特にお勧めです。

  • 治療費をできるだけ抑えたい方:保険適用なので経済的負担が軽い
  • 金属アレルギーが心配な方:メタルフリーで安心
  • 前歯〜小臼歯の治療を予定している方:見える部分を白くできる
  • 銀歯の見た目が気になる方:笑顔に自信が持てる

こんな方は他の選択肢も検討を

一方で、以下のような方は、CAD/CAM冠以外の選択肢も検討されることをお勧めします。

  • 歯ぎしり・食いしばりが強い方:破損のリスクが高まる
  • 長期間の耐久性を重視する方:セラミックや金属の方が長持ち
  • 奥歯で硬いものをよく噛む方:強度に不安が残る
  • 複数の歯を連結して治療する必要がある方:ブリッジは不可

迷われた場合は、担当の歯科医師とよく相談して決めましょう。お口の中の状態や生活習慣によって、最適な治療法は人それぞれ異なります。

治療の流れと知っておきたい注意点

CAD/CAM冠の治療ステップ

CAD/CAM冠の治療は、一般的に以下のような流れで進みます。

  1. 検査・カウンセリング:虫歯の状態やお口全体の状況を確認し、治療方針を相談します。
  2. 歯の形成:被せ物を装着するために、歯を削って土台の形を整えます。
  3. 型取り(印象採得):歯の型を取ります。最近は口腔内スキャナーを使うケースも増えています。
  4. 被せ物の製作:歯科技工所でCAD/CAMシステムを使って被せ物を製作します。
  5. 装着・調整:完成した被せ物を装着し、噛み合わせを調整して完了です。

治療回数は通常2〜3回程度。型取りから装着まで1週間前後かかることが多いです。

治療後のケアで長持ちさせるコツ

CAD/CAM冠を少しでも長く使い続けるために、以下のポイントを心がけてください。

  • 定期検診を受ける:3〜6ヶ月に一度は歯科医院でチェックを
  • 歯ぎしり対策をする:ナイトガード(マウスピース)の使用を検討
  • 着色しやすい飲食後はうがいを:色素の付着を予防
  • 硬すぎるものは避ける:氷や硬いおせんべいなどは控えめに
  • 丁寧な歯磨きを続ける:被せ物の周りは汚れが溜まりやすい

被せ物は永久に使えるものではありませんが、日々のケアと定期的なメンテナンスで、寿命を延ばすことができます。

まとめ

今回は、保険適用で白い歯が手に入る「CAD/CAM冠」について、メリットとデメリットを正直にお伝えしました。最後に要点を振り返っておきましょう。

CAD/CAM冠のメリット

  • 保険適用で費用を抑えられる(3割負担で約3,000〜6,000円)
  • 金属アレルギーの心配がない
  • 銀歯より自然な見た目
  • 適用範囲が広がり、多くの歯に対応

CAD/CAM冠のデメリット

  • セラミックや金属より強度・耐久性が劣る
  • 経年変色・着色が起きやすい
  • 外れやすい傾向がある
  • ブリッジには使えない

CAD/CAM冠は、「保険の範囲内でできるだけ白い歯にしたい」という方にとって、とても魅力的な選択肢です。ただし、万能な治療法ではありませんので、ご自身の歯の状態やライフスタイルに合っているかどうか、担当の歯科医師としっかり相談して決めてくださいね。

私が臨床の現場で大切にしてきたのは、「歯の健康は、歳を重ねてからが本番」という考え方です。50代、60代、70代と年齢を重ねても、自分の歯でおいしく食事ができることは、人生の大きな幸せです。

治療法を選ぶときは、目先の費用や見た目だけでなく、5年後、10年後のことも考えてみてください。そして、分からないことがあれば、遠慮なく歯科医師や歯科衛生士に質問してくださいね。「こんなこと聞いてもいいのかな」なんて思わなくて大丈夫。私たちは、皆さんの笑顔を守るお手伝いがしたいと思っています。

この記事が、あなたの歯の治療選びの参考になれば幸いです。